2013年4月12日金曜日

キャリア選びについて語る時に僕が語ること:キャリアの目標なんていらない

以前からキャリアに関する講演を時々やっているが、自分の過去のキャリア選択とその時に思ったことをつらつらと話すスタイルが多く、特に一般化できるまとめをしているわけではない。

ただ、質問されるたびに毎回同じように答えていることがあるので、その一部を一旦書き記してみる。

キャリア選びは人生そのものだったりすることもあり、結局はひとそれぞれに考えたらいいじゃないかということなのだが、僕の考え方が誰かの参考になったらそれはそれで嬉しいものなので。

photo credit: dno1967b via photopin cc



(内容)
1. 「キャリアの目標」なんて持たなくていい
  ・自分が発した言葉との「一貫性の罠」
  ・チャレンジしない言い訳ができあがる
2. 大切なのは、目の前にあることを本気でやること
  ・やりたいことが最初から見つかることなんてない
  ・本気でやるからわかること
  ・おもしろいと思ったら、本業以外でも躊躇しないでやったらいい
3. そして、「働く理由」が発見される
  ・よいキャリアとは
  ・価値観:自己実現としての働く理由
  ・使命感:社会実現としての働く理由
  ・使命は「空に輝く星」である


では、本編。


1.「キャリアの目標」なんて持たなくていい


よく、「自分に何が向いているかわからない」とか「目標に向けてどうやってキャリアを積んだのか」とか聞かれる。

僕は、社会人になった頃までは常に2つ先くらいまでやりたい事を考えて、それに到達するプロセスを考えるスタイルだったが、いつしかまったく違う考えをするようになった。

それは、「ゴール設定は長くても2年後までで、3年以上先のゴールは意図的に持たない」ということ。


自分が発した言葉との「一貫性の罠」


5年前の僕(ファンドで最も仕事が楽しかった頃でMBA留学準備中)には、まさか自分が起業しているとは思わなかった。

そこから更に5年前の僕(銀行で最も仕事が楽しかった頃)も、その5年後は想像ついていなかった。(そもそも、企業買収ファンドという仕事があることも知らなかった・・・)

社会の変化は速く、その行き先を読むことはとても難しい。

そして、自分の興味関心も移り変わる。

それなのに、あまりに明確なゴールを置いてそこに向けて走り始めてしまうと、前提としている社会や自分の興味関心が変わっても、「これを目指す!」と宣言してしまった自分の言葉にウソがつけなくなってしまう

無意識のうちに、一貫性を維持しようと、心の片隅にある違和感を押し殺してしまい、時にはチャンスを逃すことに繋がってしまうのだ。


チャレンジしない言い訳ができあがる


極めて感覚的ではあるが、達成に4年も5年もかかるゴールは遠すぎる気がする。

目指している方向性や領域にもよるが、キャリアの柔軟性を維持しながら頑張れるのは2年が限界ではないかと思う。

それ以上だとデメリットのほうが大きく感じられる。

先述の、社会や自分の変化に対する違和感を押し殺してしまうデメリットの他に、よくみかけるのが、チャレンジしない言い訳を見つけてしまうこと。

そもそもゴールを長期で持っているということは、(その判断の是非はともかく)「まだ準備ができていない」ということを指しているわけだ。

皆さんの周りにもいるだろう、「◯◯で経験を積んでから起業する/転職する」と言いながら、結局アクションをしないで何年も経っている人が。

まだ準備ができていないから、今は自分に投資するべきと言いながら、ずるっと遅れていく。

「まだ時間がある」という考えが生むのは、先送りや惰性だ。

夏休みの終わりに宿題を一気にやる子供のように、5年計画の最後の1年で頑張ればまた違うのかもしれないが、そこまでに色々と環境や興味が変わるから、結局5年計画の5年目なんていうのは永遠にやってこない。

結果、心の片隅で「こんなはずだっけ」と思いつつも、長期計画を立てられるくらいには意識が高いわけだから、日常レベルではそれなりに物事はうまくいく。
で、なんとなく自己正当化できるくらいにはなれる。

ただ、自分が生きてきた価値観の正当化を繰り返し、無意識の自己欺瞞に陥っている人っているよね。「こんなはずだっけ」という違和感すら消えてしまう。

別にそれが不幸だという趣旨では全くないよ。

ただ、そうでないキャリアを描きたいと思っていたのにも関わらず、長く生きれば生きるほど経験の欺瞞が蓄積し、塗り重ねられて行ってしまうのは、できれば避けたいよね。

気づくのは早い方がいい。

もちろん、長期目標を立てて走りきれる人がいないわけではないのだが、実践できるのは天才か変人であって、そんな人はキャリアに迷わないから僕としては放っておくことにする(笑)

(そういう人が社会を動かしている側面もあるし、尊敬の対象でもある)

いずれにせよ、大事なのは、大きな目標を持つべきという「べき論」から開放されることと、結果として長い期間同じ事を努力して成功したという「結果論」と混同しないことだろう。



2.大切なのは、目の前にあることを本気でやること


やりたいことが最初から見つかるなんてことはない


例えば学生の場合は、なぜ働くのか(Why)、どんな仕事をしたいのか(What)、どうやったらうまくいくのか(How)の全てにおいて、肌感として実感した経験が乏しい。

そんな状況で一生の仕事を決められると思うことのほうがおかしいだろう。

生涯の仕事を見つけたと思っている学生をみかけると、よくもまあ自分の能力や判断力をそこまで信じられるのかと驚いてしまうよ。

社会人になれば、仕事経験のゼロとイチの違いは大きくて、学生に比べればはるかに強いキャリア観を持てる。

それでも長期の目標を正しく持てるほどではないというのは最初に書いたとおりだ。


本気でやるからわかること


結局、キャリアの選択には必要以上に悩むことなく、直感を信じて、目の前のことを本気でやるしかないのではないかと思っている。

本気でやってみて初めて、「これはおかしい」とか「こっちのほうが楽しい」とかがわかるからだ。

そんなもの、やる前から頭で考えたってわからないし、わかったと思っていても大体は勘違いだ。

だから変に立ち止まって、中途半端に「自分探し」することになんか意味が無い

自分探しなんて言葉は「今の自分はほんとうの自分じゃない。本当の自分はもっと凄いはず」なんて思っている"中二病"的な言葉でしょ(言いすぎかな(笑))

過去に対する執着も未来に対する不安も捨て、今の「ありのまま」を受け入れて、本気でやるしかない。

何かが見えてくるきっかけは、怒りの感情かもしれないし、降ってくるチャンスかもしれないし、世の中の変化の兆しをいち早く掴むことかもしれない。

でも、こういうのは、本気で頑張っている人のところにしかやってこない話なわけだ。

そして、キャリアチェンジするタイミングは、「それとわかる形で突然やってくる」。

頭で考えての決断というより、何かそこに「愛」や「怒り」が生まれる感じで、やってくる。

だからあんまり悩む必要はないのだ。


おもしろいと思ったら、本業以外でも躊躇しないでやったらいい


何か「これだ!」と思うことがあれば、本業にするならもちろん、本業以外のことでも躊躇わずやってみたらいい。

それはNPOの活動かもしれないし、副業かもしれないし、なんでもいい。
直感的に「渇き」に従えばいい。

僕にとっては、NPOブラストビートNPO二枚目の名刺があったからココナラがあるわけで、あの頃に頭で考えて「深夜や週末にNPO活動するのはやめておこう」と思っていたら、少なくとも今のキャリア、もっというと価値観や社会観は、得られなかった。

キャリアを変えるためのチャレンジは、ココナラをきっかけにしてくれてもいい。
(そのためのサイトでもある)

ココナラでの実例として、なんとなく得意だったこと、やってみたかったことをココナラでサービスとして出品してみたら、相談者からの強い思いと感謝の言葉に自分の得意なことに対する意義を感じ、転職や創業してしまった方が何人かいる。

きっかけはどこにだってある。



3.そして、「働く理由」が発見される


よいキャリアとは


「長期の目標なんて持たなくていいからとりあえず目の前のことを頑張っている方が結果としてよいキャリアが構築できるよ」というのが今回のエントリーの趣旨なので、ここでやめてもいいのだが、もう少しだけ書いてみる。

そもそも、よいキャリアって、なんだろう?

僕にとっての現時点での答えは、よいキャリアを歩んでいる状態というのは、自分なりの働く理由(Why)が明確になっている状態だと考えている。

そして、働く理由は、頭で考えるものではなく、内なる声を「発見する」ものだ。

決して、こうあるべきだという頭で考えた理想像から作ったり設定したりするものではない。

目の前にある課題にぶつかっていき、試行錯誤し、意思決定を繰り返す中で、徐々に自分の中に見えてくるものだ。

更に言えば、働く理由は、他の誰かと差別化するためでも、ビジネスパーソンとしての競争力の源泉でもない

だから、他の誰かと結果としてまったく同じでもかまわない。

働く理由は、自分のためのもの。

自分が、自分の足で歩むために。

周りの人がどう思うかは関係ない。

自分が熱い思いを持って、心底から抱いているのは、どのような思いだろうか?

中身の良し悪しではなく、自分なりの働く理由を信じ、規律を持って迷いなく頑張れているだろうか?


価値観:自己実現としての働く理由


「働く理由」にも2つあると思っている。

それは、平たく言ってしまえば、「自己実現」と「社会実現」。

つまり、ビジネスパーソンとして「どうありたいかい」と、働くことで「何を達成したいのか」。

自己実現というと、一般的には、自己の夢や目標の達成に近づいている状態をあらわす言葉として使われている場合が多いとは思う。

ただ、あえて自己実現と社会実現をわけて言っているのは、自己実現を自分が「無条件で」大切にする価値観を発見できている状態として、僕は定義したいから。

つまり、自己実現とは、さまざまな局面で、自分がどう振る舞うかを規定できている状態だと考えている。

働く上での価値観とは、自分にとっては時代を超えた生存原則であり、その正当性を外野からとやかく言われる筋合いはないもの、だ。

仮にその価値観があることで競争上、効率上、不利になったとしても、決して曲げずに持ち続けるもの

そんな価値観をもって自分が振る舞えている状況が実現できているならば、それを自己実現できていると呼んでいいのではないかと思う。


使命感:社会実現としての働く理由


そして、自分が働いていく上で理想的なモチベーションを言語化したものが、使命、あるいはミッションと呼ばれるものだろう。

社会実現。
つまり、キャリアを通じて、自分は世の中に対して何を実現したいのか

これは、具体的な目標(What)や事業戦略(How)ではなく、ビジネスパーソンとしての精神であり、存在理由だ。

いまやっていること、やろうとしていることは、なぜそれほど重要だと信じているのか。

それを考え抜けば、ビジネスパーソンとしての存在理由は、「〜すること」という一文にまで純化させられるはずなのだ。


使命は「空に輝く星」である


働く理由、つまり「自己実現」と「社会実現」は、それが自分なりに定まっていることが重要なのであって、結果としてビジネスとして大きな成果を出せているかはあまり関係ないのではないかと思っている。

先日、どう考えてもその領域では日本国内では他社に追随を許さない圧倒的なトップサービスを展開している方に連続してお話する機会があった。

驚いたのは、お二人とも「まったく自社のサービスの認知度が足りていない、理想から程遠い」と言っていたこと。

彼らの頭には、1番になることとか、何千万人が使うサービスを作るとか、そういうこととは違う次元のビジョンがあるのだろう。

例えば、「目標」や「ゴール」は、「〜になること」と表現することができる。
それは、その状態を実現できたら、「確かに〜になった」と判断できるものだ。

一方で「使命」、あるいは存在理由は、「〜すること」と表現されるもの。

それは、例えるなら「世界中の人を笑顔にすること」みたいなもので、「確かに〜になった」と判断できる「目標」と違い、現実的に確認できる状態を作り出すことは不可能なもの。

つまり、使命とは空に輝く星みたいなもので、そこに向かって走ることはできるけれど、一生手が届かないものなのだ。

人間の夢や目標に最終到達点などというものはないのだから、まだ具体的にさほど前進していなかったとしても、そんな自分なりの「空に輝く星」に向かって走り出せたなら、それは自分なりの「働く理由」をもった状態、つまりよいキャリアを歩んでいると言えるのではないだろうか。

まとめると、

  • 長期的な「目標」を無理に作ってもいいことはない
  • 短期的な目標や、興味関心、それがなければとりあえず目の前のものに本気で注力したらいい
  • そうすることで「働く理由」が見えてくるので、そこからそれを少しずつ具体的な目標として具現化していけばいい

といったところだろうか。

どの程度確固たる「働く理由」を持てるのかは人によるのだが、走りださなければ見つからないものなのは確かだ。

今は暗闇だったとしても、必死に走っているうちに、星は見つかると思うよ。


photo credit: Ken Schwarz via photopin cc


最後に


キャリアに関する講演の他に、もうひとつ、今回のエントリーを書くきっかけとなったイベントがあった。

そのまとめブログは大変参考になるので、お時間があれば、ぜひ。


あと、別に採用のためにこのエントリーを書いたわけではないのだが(笑)、せっかくなので宣伝。


エンジニアやデザイナーの優先順位が高いのは確かだけど、上記に書いていない、運用業務の担当者やWebマーケティングの担当者、それらを広くサポートしてくれるインターンは随時募集していくので、ココナラのビジョンと、皆さんの働く理由がマッチしてそうだと思った方は、ぜひお気軽にご連絡ください。

(一緒に知識・スキルの販売サイト「ココナラ」を育ててくれるエンジニアやインターンを募集しています)


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