2017年4月2日日曜日

転職を「卒業」って言うけど、卒業試験は受かってるのかなって話

採用面談をやっているときに時々残念な気持ちになることがある。
「ああ、この人、『卒業試験』に受からないままで転職を繰り返してきちゃったんだなぁ」という感覚。


これ、結構まずい。
気付いたときにはちょっと手遅れで、キャリアが行き詰まる可能性がある話と思っているので。


どういうことか。

履歴書を見るとまず、その人は職務の領域を広げてきたのか、深掘ってきたのかがわかる。
その点においては正解も不正解もないのだが、少なくともどちらを志向しているかを本人自身も自覚的であることが多い。

それはよい。

問題は、経験に応じて身につけておいて欲しい、履歴書には現れないソフトスキルの方。
それを身につけることなく転職を繰り返してしまっている人をみると、ああ、まずいことになっているなぁと思う。

若いうちは、目の前の仕事をまずはしっかりできるようになってくれればそれでいい。
でも年齢を重ねるとともに、目に見えやすい知識やスキルを超えて、身につけていてほしいことがたくさん出てくる。

例えばそれは、自分ひとりではなくチームで成果を出す働き方だったり。
あるいは、短期での成果は見えにくいが長期的には重要な課題を自らセットして、粘り強く進んでいけることだったり。

ある程度シニアなら、会社が変わってくれないと嘆くのではなく、自ら経営陣にはたらきかけて会社を動かせるスキルだったり。

若い人に「会社が動いてくれなかったんです」と面接で言われてもなんとも思わないが、それなりのポジションの人間がそれを言うと「はぁ?それはあなたが持っているべきスキルが足りないからじゃないの」と思ってしまうことがある。
いつまでジュニアの気分なんだと。

同じ会社(良い会社に限る、かな?)に長くいる場合は、意識的なのか結果論なのか、段階を踏んでそういったソフトスキルが身についている人が比較的多いなと思う。

ただ転職を繰り返している人は、職務の領域や目に見える知識・スキルのことばかりを念頭においてキャリア設計して、そういったソフトスキルを身につけることを十分にしないままに転職をしていることが少なくない。

中途採用が中心の会社の場合、そういったソフトスキルを「育成する」という仕組みだったり経験だったりが雇う側に薄い事が多い。
だから自分自身でテーマを設定して磨いていかないといけないのだけど、必ずしも皆ができることではない。

本人にとって厄介なのは、1-2回目くらいの転職の時は、そういったスキルを身につけていなくてもそれなりに転職活動は成功できること。

でも、30代半ばくらいになってくると、急に転職が難しくなる。
リーダークラスの人間として、必要なソフトスキルを持っているかどうかという判断軸の重要性が増してくるので、急に思ったような転職ができなくなる。

じゃあ、必要なソフトスキルを持っていないとなった場合、もう一回ジュニアポジションからやりなおしてそのスキルを身につけることができるかというと、残念ながら難しい。
同じスキルレベルなら、伸びしろがある若い人が優先的に採用されるので、機会が与えられない。

だから若いうちから、そういったことは意識的にやっていかないと、危ない。
気付いたら、手遅れになってしまうから。

時々、履歴書を見る限りはとてもよいのだけど、なぜか年齢の割に給料が安いんだよね、ということがある。
そういう方は、残念ながら「お買い得」であることは少なく、履歴書では見えないソフトスキルが足りてないことが原因であったりする。

一見「卒業」できたように見えるけど、合格していない卒業試験は、必ず追いかけてくる。
前の職場で感じた困難や課題は、かなりの確率で次の職場でも同じように直面するのだ。

もちろん、「試験すら受けさせてもらえない」ほど相性が悪い職場もあるので、そういう時は躊躇せずに転職したほうがよいのかもしれない。
でも、ほとんどの場合は、直面している苦しみ自体が、あなたの卒業試験だったりするんじゃないかな。

キャリアのステージごとに存在する、見えない卒業試験。
転職することで自然と合格する卒業試験は、ない。

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