ブラストビートの活動をがっつりしていた時期ではなく、起業準備に入ってほとんどブラストビートの活動には参加できなくなってから理事になるというのは皮肉なものだが、代表のまっつん(松浦さん)から「ブラストビートの若い子たちにオトナがチャレンジする背中を見せてくれればそれでいい」と言われ、喜んで引き受けることにした。
改めて、ブラストビートとは「『音楽×起業×社会貢献』で チャレンジする10代を増やします!」という謳い文句の、アイルランドに源流を持つプログラムだ。
実際のプロジェクトは、以下のようなもの。
- 10代の若者中心に10人ほどのチームを作り、3か月後に「ライブイベント」を行うミッションを与えられる。
- CEO(社長)、イベント企画、財務、広報、CSRなど、ひとりひとりが担当を決め、会社組織に準じる形で責任を分担する。
- ライブに出演してもらうバンドの発掘と出演交渉、ライブ会場の確保、イベントのPR、ウェブサイト作成、チケット販売などをすべて自分たちで考えて実行する。
- イベントの収益の25%以上をNPOや慈善団体などに寄付することが条件となっていて、自分たちがどのような社会的な活動をサポートしたいのか、自ら考える。
2009年の3月末、オックスフォードMBAでのテスト期間中に、オックスフォードのイベントに来ていた創業者と僕が出会い、猛烈に惚れ込んだプロジェクト。あまりに興奮して、テスト勉強も手につかず、3日間くらい子供たちと一緒にプロジェクトをしている自分の姿を妄想したものだ。
結局、イギリスに進出中のブラストビートのコンサルタントになることを申し出て、イギリス政府からの資金調達のサポートをやりつつ日本への導入を構想し、NHKの番組で取り上げられたのをきっかけに日本でプロジェクトが立ち上がったという経緯がある。
09年7月15日の深夜にNHKで放送後、その数分後に現代表のまっつんから「日本でやりたい!」という熱いメールをもらった時は、本当に胸が熱くなった。その時は結果50人くらいメールをもらったと思うが、ブラストビートはまっつんが代表じゃなければ立ち上がらなかったと思う。
あの時たまたままっつんが深夜にNHKを見てなかったら、あるいは50通来たメールから直感的に"まっつん"に代表をお願いしようと僕が思わなかったら・・・。
2009年7月10日、NHKでの放送直前のブログで、僕はこんなことを書いていた。
・・・ご想像の通り、高校生にとっては通常の授業をやりながらのプロジェクトなのでまったく簡単ではありません。プロジェクトに参加する学生の動機も様々です。「目立ちたい」「お金を稼いでみたい」「ビジネスを知ってみたい」「なんだか楽しそう」「音楽が好きだから」「何か達成感を得られそう」。。。やってみると大変なので途中で仲が険悪になることもよくあるようです。
しかしながら、そんな経験を通じて高校生たちは「チームワークとは」「リーダーシップとは」を学びます。「お金を稼ぐことの難しさと意義」「社会問題に対する気づき」「少額でも社会問題の解決に貢献したという誇り」を得ます。
そして何より「自分たちはやればできる」という達成感。高校に入るまですべてが親や学校のコントロール下で過ごしてきて、中には学校はまるでつまらないと思っている生徒も多い中で、生まれて初めて自分自身でコントロールをとって何かを成し遂げるという達成感と自我・自尊心の形成。
自分たちは「多くの人を楽しませることができた」「お金を稼ぐことができた」「困っている人を手助けすることができた」。。。
また、その7月末に創業者と一緒に来日し、100人以上の人たちとブラストビートについて語り、立ち上げチームを組成し・・・という熱狂の数日を経て、次のブログではこんなことを書いていた。
・・・ただその一方で、僕はこのプログラムを「大人のためのプログラム」に仕立て上げたいと思っている。今回このプログラムに関わり始めて思ったのは、日本人のビジネスパーソンの中に、自分が社会で学んだことを伝えることで社会に何らかの還元ができるのであればぜひ貢献したいと考えている人が多いということだ。
これは必ずしもいわゆる「成功しているビジネスパーソン」に限った話ではない。自分が高校時代に体験した苦悩を今の子供たちに味あわせたくないと考えている人もいれば、純粋に今の自分の存在価値を見出したいがために何らか自分が貢献できる分野を見つけたいという思いも感じることがある。
大人を救うとまで言えば大袈裟に過ぎるが、そんな思いを持つ大人が貢献できる場を提供する。しかもイギリスやアイルランドの高校生を魅了したのと同じく音楽を通じた「クール」で「楽しい」かたちで。
今読んでみるとちょっと青臭いけれど、でもそのほとんどをまっつんを中心としたチームが形にしていることに本当に驚く。
高校生や大学生が、ブラストビートのプログラムを通じて別人のように成長していく様子をたくさん目の当たりにしてきた。彼らのそばに寄り添い、教えるではなく「学びの機会を作る」ために苦悩している、社会人のメンターの変貌ぶりも同様だ。
そしてもうひとつの大きな変化。
それは、僕自身。
いま起業して立ち上げようとしているサービスも、実は上で書いたようなビジョンにそのまま根ざしたサービスだ。起業するという決断も、そこで目指す世界観も、ブラストビートがあったからこそではないかと思っている。
当面は起業に全力を注いでいくので、ブラストビートの理事としてはほとんど活動ができないと思うけれど、がっちりと「背中」を見せていきたいと思う。
最後に。
ブラストビートを紹介する記事やらドキュメンタリーは色々あるけれど、その中からひとつピックアップしてご紹介。
女子高生たった6人のチームでイベントを成功させ、何やら面白そうなドキュメンタリーを自分たちで作り始めたチーム「JETCOASTER」の、ドキュメンタリー予告編。
ブラストビートの楽しい側面がよく出てる!