個人的には、とても従業員に優しい制度だなぁと思っている。
その後運用でどうなっているかは知らないけれど、当時の話では、従業員の下位5%をD評価とし、D評価1回でイエローカード、2回目でレッドカードとなり、2回目で部署異動または退職勧奨のいずれかを選択してもらうというもの。
仕事のパフォーマンスだけでなく、価値観、文化の合わない人も対象になるとか。
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これだけみると、ずいぶんと厳しい制度に見えるが、合わない人には早めに合わないと言ってあげることは、とても誠実な行為だと思う。
しかも、名前が示す通り「ミスマッチ」制度であって、社員をダメ認定するということではなく、あくまでも「合わない」という話である。
個人のパフォーマンスは、もちろんその人の資質と関係ないとは言わないし、できる人はどこに行ってもできるということもあるのだろう。
ただ、職務との相性は大きいと思うし、仮に得意な職務でも上司とスタイルがあわなければ、パフォーマンスを発揮できないということもある。
サイバーの制度を見ると、「部署異動または退職勧奨」となっているが、部署が移動したことでパフォーマンスを発揮し始める人もいるはずだ。
また、あくまでもミスマッチなので、原因が部下ではなく上司であることもあるだろう。
そのあたりが早期に炙りだされる仕組みというのは、とても健全で、従業員にも優しい制度という印象を受ける。
きっとこういう仕組みを運用していくことで、単に相性の悪さを組み換えにより改善するということだけではなく、相性が悪そうな人と早めに会話を開始し、そもそもの相性を改善していくことにも繋がるんじゃないかとも想像する。
とにかく、サイバーエージェントに入社できているという時点で、世の中的には優秀な人なのだから、人の問題ととらえずに、相性の問題と捉えるほうが自然だと思うのだ。
こういう制度を導入できるサイバーエージェントの経営陣は、ほんと尊敬するよ。
すごい。
(注:サイバーの人に話を聞いたわけではないので、実際にどういう運用になっているかはよく知りません。詳しい人がいたらぜひその後を教えてほしいです。ここでは退職勧奨した例はないとなっていますが。)
企業の問題の多くは「間」に転がっている
さて、前職の企業買収ファンド時代は、仕事柄、多くの企業の中に入って経営改善を行う機会があった。
企業が抱える問題は千差万別であるのは間違いないのだが、個人的な経験として、どこの会社でもある程度通用する改善の視点というものがいくつかある。
そのうちの一つが、問題を特定の「対象」、つまり人や組織に求めるのではなく、その「間」に求めるという視点である。
「間」とはすなわち、経営陣と従業員の「間」、部署と部署の「間」、上司と部下の「間」、である。
例えば、とある会社で、経営陣と従業員の間に相互に不信感が漂っていたことがある。
経営層は従業員のことを評価しておらず、自分がやらねばと、トップダウンで現場にも指示を出していた。
一方従業員は、その指示がずれているから経営陣への信頼を失い、まともに報告したり相談したりすることを諦めるようになっていた。
そして、まともな情報が上がってこないから、経営陣のトップダウンの意思決定はますますずれていくという悪循環。
程度の差はあれ、かなりの数の会社で起きていることのように思う。
また、別のわかりやすい例が、開発と営業の不仲。
製品のレベルが低いから売れないと開発を責める営業と、良い物を作っているのにまったく売る力がないと営業を責める開発。
耳が痛いと思う人もいるだろうし、「いやいや、だってうちの開発(or 営業)はマジでひどいんだよ」と反論する人もいるかもしれない。
これらの「あるある」事例を見た時に、ああなんてダメな経営陣なのかとか、営業と開発がいがみ合うなんてどちらも程度が低いなぁとか、そういう感想を持ってしまうこともあるだろう。
でも本当にそうなのか。
どちらの例も、ほんの少しのボタンの掛け違いでわずかな不信感が生まれると、それがどんどんと増幅していくメカニズムにある。
意識的に悪循環を止められる文化なり制度なりが組織に内包されていればよいのだが、なかなかそううまくは行かない。
会社全体としてうまくいっていても、とある部署で、たまたま生まれた上司と部下の相性の悪さが増幅し、じわじわと会社全体を蝕んでいくこともある。
どの会社でも、人のレベルに関係なく、必ず直面する類の問題なのだ。
実際に、前職時代の投資先で似たような事例があった際には、現場の優秀層に直接社長に提案させる機会を作ることにした。
結果、社長は現場の従業員のレベルの高い提案に驚き、従業員は社長の素早い意思決定と実行に驚き、そこから一気に経営陣と従業員の「間」を詰めて、信頼の悪循環を好循環に反転させることができた。
社長のビジョンや戦略意図が従業員に伝わっていない、現場で起きていることの情報が社長に上がってこない、異なる部署同士が戦略や目標を共有できていない・・・
それは全て、「間」で起きている問題。
そんな時は、会議体の設計や、情報伝達の方法を変えるだけで、みるみると会社が良くなることがある。
すごくシンプルな例だと、部署ごとにフロアが違う会社をワンフロアにしたり、情報共有ツールを刷新したりするだけでも、改善することがある。
誰だって、自分の会社がより良くなってほしいと思っているものだ。
堂々と正論を吐き、それがちゃんと届くべき人に届き、議論され、その結果が反映されるという環境が整えば、各組織・各人は機能し始め、結果として会社がよくなっていく。
完璧な経営陣や従業員はいない。
人や組織といった「対象」に原因がまったくないとは言わないが、その前にまず「間」を見つめる視点をもつだけで、会社はかなりよくなっていくと思っている。
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個人としてどう「間」をみていくか
自分が経営者なりマネージャーの立場なら、いかに情報や目的が手間なく速やかに共有・伝達される仕組みを作るか、何か問題が起き始めた時に悪循環のサイクルに堕ちるまえにあぶり出し、修正していくかという視点が大事になる。
ただ、言うのは簡単なのだが、意外と難しいもので。。。
なぜなら、仕組みの設計も言うほど簡単ではないし、仮に設計がうまくても、それとセットで文化を作っていないと機能しないし、その文化を作るという行為は、経営陣の胆力によるところが大きいと思っているからだ。
自分の中でも、何か問題が起きた時に、「あいつが・・・」と真っ先に人を思い浮かべることが避けられない。
これは、感情的に仕方がないことだと思う。
そこをぐっと飲み込んで、その人の根っこにある気持ちを理解し、その人個人の問題ではなく、間にあるコミュニケーションだったり制度設計だったりの問題であると、強い気持ちで捉え直し、向かい合っていくことが求められるのだ。
また、自分が感情的になっていないとしても、立場上、「あいつが悪い」「あの人をなんとかしてくれ」と言われることが多い。
前職でいろんな会社の経営陣の片隅に脚を突っ込み初めて以来この10年ちょっと、常に言われ続けられているといっても過言ではない。
その時に、その場で「そうだよね」と言ってしまうのは簡単。
ただ、簡単に人や組織の問題に帰せず、それが個別の原因がある話なのか、根底にあるコミュニケーション不全や誤解などの「間」の問題なのか、本当に人や組織の問題なのかを見極めて、対処しなければいけない。
(実際はそのミックスであることが多いので、切り離す作業こそが難しかったりする)
自分は勇気を持って主張することがそれほど得意でもないし、元々オープンなコミュニケーションが得意ではなかったし、ついつい流されるところがある、未熟な経営者なのだが、少しでも改善しようと努めてはいるつもりだ。
もしあなたが経営者ならお互いがんばっていこうよと言いたい。
従業員の立場の方なら、将来より良い経営人材になるためにも、「あいつが・・・」「あの部署が・・・」といいそうになったら、一歩立ち止まり、俯瞰的にみて、「この問題が・・・」と言い直せるようにしてみたらいいんじゃないかな。
それができたら、少なくとも僕より立派な経営者になれる可能性が高いと思う。
みんな、良い事業・良い会社を作りたいんだ。
人を責める前に、「間」に落ちている問題を解決しよう。
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