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2013年1月4日金曜日

会社設立1年を迎えて、僕の人生の原点(92年10月)の話

今日、2013年1月4日は、株式会社ウェルセルフの設立1周年の日だ。

2012年は初めて会社を作り、12年間いた金融の世界から、まったく経験のないWebサービスの開発・運営会社の経営者に転じた、大きなチャレンジの年だった。

お陰様で、本当に多くの方々のお陰様で、僕らが初めて作ったWebサービス「ココナラ」は、なんとか立ち上がることが出来た。

多くの関係者・応援団のみなさま、そしてココナラを色んなかたちでご利用していただいたみなさまに、改めてお礼を申し上げたい。
本当にありがとうございます。

さて、そんな会社設立1年の節目の日に、少し昔話をしたい。
(例によってちょい長めです)

特にその時には意識していなかったのだが、今から振り返ると僕の原点となった、92年10月の話を。



手作りの気球を飛ばすというチャレンジ


懐かしの旭丘の校舎をバックに。



上の気球の写真は、当時、愛知県立旭丘高校の204組の学園祭の出し物として作った気球の写真だ。

今から考えると、インターネットもない時代にどうやって気球の作り方を調べたかもわからない。

学校全体のイベントではなく、単なる1クラスの出し物として、人が乗る気球を作ろうという無謀なプラン。
何を思って、生徒や先生が合意したのか、その時の気持ちもよくわからない。

誰が言い出したかは憶えている。
僕が現実路線の反対派として、一番声が大きかったことも憶えている。

でも、やると決めた以上、失敗するのはカッコ悪いから、色々と頑張った。

気球に耐えられる布を買うお金がそもそもなかったが、東レに連絡して趣旨を説明したら、オレンジと緑の布を無料でくださった。

佐川急便に電話したら関西の倉庫から無料で名古屋まで届けていただけた。
地元のブラザー工業にかけあったら、最新のミシンを10台無料で貸していただけた。

人が乗るかごはクラスメイトの親御さんのツテ(だったかな?記憶が曖昧・・・)で作って頂いた。

そもそも公立高校のクラスの出し物なので予算がまったくなかったのだが、親からのカンパも含めて、なんとか材料を準備しきった。

僕らにとって「企業」との初の接点だったように思うが、その懐の深さにはいま思い返してもグッと来る。

以前こちら(「僕が学んだ起業の方法の全て」)でも書いたが、想いに共感したら人は助けてくれるんだな、ということの原点だったかもしれない。



夜明け前が一番暗い


ただ、材料を集めるのは序の口の話で、とにかく作るのが大変だった。

高校2年の夏である。
クラスメイトはそれぞれ、秋に向けて部活が多忙な時期だ。

授業と部活が終わった後、膨大な作業が発生した。
学校に泊まりこみの日々が続いた。

担任の先生が理解がある方で、学校の部室に泊まりこむのを見て見ぬふりをしてくれた。

それはよかったのだが、とにかく、作業が辛い。
本当に間に合うかどうかわもわからない。

部活などの忙しさが人それぞれなこともあり、作業量だって公平ではない。
僕自身もラグビー部で大会直前だったので、あまり作業ができずに心苦しい日も多かった。

クラスの空気も、「一致団結でがんばりました」という美談だけですむ簡単な話ではなかった。

教室での作業。黒板には「熱気球 超大ピンチ!」の文字。奥の右側が僕。

とにかく、時間的に間に合うかどうかギリギリだった。
せっかくのイベントなのでと、NHKにも取材依頼をしていたのもプレッシャーだった。

そして、運命の学園祭の1日目を迎えた。
ぶっつけ本番。


果たして気球は、飛ばなかった。。。


布が破れてしまったり、うまく熱することができなかったりと、ある程度膨らますことはできたけれど、とても飛ばせる感じではなかった。

この時が、一番つらかった。

皆が楽しみまくっている学園祭の日。

校舎の中では楽しい出し物がたくさんあるのだろうが、他のクラスの出し物を見に行く余裕はまったくなく、僕らはずっと運動場で布の手当てをしていた。

微塵も楽しい気持ちにならず、とにかく、学園祭の2日目になんとか気球を飛ばしたい一心で、必死だった。

NHKの取材は、膨らみかけの気球を少し映し、メインの映像は、運動場で僕らの隣で走っていた手作りゴーカートだったと思う。
(いま考えると、それもまたすごい出し物だよな・・・)

とにかく、これまでの努力が無駄になるかどうかの、ギリギリの状況だった。



「やればできる」を掴んだ日


学園祭2日目。
結論から言うと、写真でお見せした通り、気球は飛んだ。

布が破れることもなく、学園祭の2日目は、校庭内でなんどか飛ばすことができた。

最初は人を乗せずに上げる。
その次に、クラスメートを乗せて、飛ばす。

クラスで一番身体が小さな女性を乗せて、4階の高さまで飛んだ気球を見た時は、あまりの感動に涙が出た。

気球が飛んだあとの幸せな記念写真。

一回一回熱風を吹き込み、その間はみんなで手で気球を持っているという原始的なやり方なので、体力的に何度もあげられない。

クラスメイトで乗れたのは数人で、あとはお客さんが4−5名だろうか。

とにかく、凄まじく疲弊したけれど、この時の感動はものすごいものだった。

「やればできる」という発想は時に危険だし、できない人を「努力不足」として追い詰める言葉だったりするけれど、それでもこのとき、自分達で掴んだ「やればできる」という感覚は、その後の人生に大なり小なりの影響を与えたんではないかと思う。

特に、アイデアが上がった頃には「そんな無謀なこと、どうやってやるんだ!」と反対派だった僕なので、その影響は大きかった。

(この辺の感覚があるからこそ、僕はNPOブラストビートを高校生のために立ちあげたいと思ったわけだ)

そんな、92年10月11日の出来事だった。

ウェルセルフを起業するにいたったマインドも、割りとこのあたりが原点だったのではないかと思っている。



幸せな気分を打ち砕いた銃声


ただ、92年10月が僕の原点なのは、もう一つの理由がある。

気球をあげた1週間後の10月18日。
ラグビー部の同級生だった服部剛丈が、アメリカルイジアナ州のバトンルージュで射殺された。

この事件については語ると長くなる。
というか、うまく語れない。

事実としては、その年の夏まで一緒にラグビーをやっていた仲間が、留学先で射殺された、ということ。

彼の死を知らせる電話を受けたのは、ラグビー部の花園予選でまさかの敗退をして、悲しみにくれていた日の夜だった。

翌朝、一週間前に学園祭で盛り上がっていた僕らの校舎には、涙にくれる僕らにカメラを向けるテレビ局がたくさんきていた。

廊下でラグビー部のメンバーと抱き合って泣いたり、(若気の至りだが)マイクを向けてきたレポーターに殴りかかってしまったり。


事件のあとしばらくは、悲しみを振り払うために、鬼気迫る勢いでラグビーの練習をした。
誰に言われるでもなく、徹底的に激しい練習を、自分たちの意志で、毎日。

その翌月にあった県立大会で旭丘高校が優勝した頃には、みんなの身体はボロボロになっていた。

最近僕と一緒にいる友人は、僕が腰痛に悩まされているのを知っているかもしれないが、無茶な練習がたたって腰痛をわずらい、立つことができなくなったのはこの時が最初だ。

服部の事件については、その後発足した日本ルイジアナ友好基金の交換留学のメンバーに僕が選ばれ、この時のアメリカ訪問の経験を経て、アメリカへの留学を決意することにつながっていく。

それによってまた僕の人生が動いていくわけだが、色々考えるにつけ、自分の人生の様々は、遡ると全てこの頃につながっている気がしてならない。



僕はまた気球を上げたい


無謀だと思いながらも、想いを語ってたくさんの方々の助けを借り、みんなが楽しんでいる間も歯を食いしばってがんばり、気球を上げることが出来たという経験。

今日書きたかったのはこの話だけだった。

今まだ空気を膨らましている段階の「ココナラ」を、たとえ布が破れても、歯を食いしばって、なんとか大空に飛ばしたいんだよ、ということを言おうと思っただけだった。

でも書いているうちに、その後の、もっと辛かったことを思い出してしまった。

ひょっとすると、ココナラを育てていく上で、あるいはウェルセルフを運営していく上で、破れた布を縫うのとはぜんぜん違うレベルの、いま想像していない困難や苦しみが待っているということの暗示かもしれない。

それでも、生きている限りは前に進むしかないし、前に進もうとしている限りはなんとかなるんだろう。

あの頃の経験が今の僕をプラスの方向に形作っていると考えると、今後待ち受けている困難もなんぼのもんじゃいという気になるものだ。


スタートアップとは時に「ほとんど可能性がないアイデアを絶望的なまでの努力でものにしようと頑張る起業のこと」なんだろうと思うが、そんなしんどい定義もかえってワクワクしてくるよ。


直面する難題を楽観主義という「意思」を持って乗り越える。

92年10月の出来事が僕にプレゼントしてくれたのは、こんな精神なんだと思う。

そう。
無意識に発生してしまう「悲観」を、「意思の力」で乗り越えようとする、前向きで、未来志向の精神。

こんな精神で、2013年は、ココナラという気球を大空に飛ばしたい。

そのための苦労は、意志の力で、前向きに乗り越えていく。

そんな僕の楽観主義に、今年もお付き合いいただければ幸い。

皆さんを気球に乗せますよ!
気球に乗ってどこまでも、ですよ!!!(笑)


飛躍の年にします!
2013年もよろしくお願いします!




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