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2011年11月8日火曜日

そろそろNPOのイベントは進化しないと。

別にNPOのセミナーがつまらないと思っているのではないですよ。学びが多くて素敵なイベントが多いには多い。

だけど、自分が主催者側に入っているものも含めて、「もったいない」イベントが多いなぁとも思っているわけだ。

自戒も込めたダメだしエントリー。
NPOはそろそろ本気出さなくちゃ。

■「感動の消費」で終わらせてしまっていいのか

10月30日に僕が関与しているNPO二枚目の名刺のイベント(第三回コモンルーム)があったのだが、イベントの後半でNGOゆいまーるハミングバーズ代表の照屋さんのプレゼンを聞いた。ほんの短いプレゼンだったのだが、モンゴルの子供たちへの愛情が溢れ出る彼女の話は何度聞いても涙が出てしまう。

僕は参加できなかったのだが、11月3日には、代表の慎さんはじめたくさんの友人が活動しているNPOリビングインピースのフォーラム(LIP教育フォーラム2011 Think and Act Now)があった。twitterで様子を伺っていただけだが、サヘル・ローズさんの生い立ちの話は、現場にいた方はさぞ心が震わされたのだろう。

NPOとは共感で結びついている組織である。良い意味で人の感情をうまく活用するのがNPOのリーダーとしての基本動作だ。課題と結びついた根本的な情動を持っているリーダーが、赤裸々に自分のストーリーを話し、聴衆を巻き込む。

強い思いがあり、逃げない人たちだと思わせること。欠点や悩みについて正直であること。これがあるから、まわりはリーダーを助けようと、集まる。

NPOにとっては、メンバーや会員、寄付金、あるいは活動への理解者・協力者を増やすことはとっても大事。リーダーが直接語りかけられるこうしたイベントは、NPOにとってかなり重要な場である。

言い換えると、メンバーや会員になったり、少なくとも理解者となり語り部となってくれるようなその後の「アクション」に繋がるかどうかがキモなのだが、そのあたりがどうも十分にデザインされていないイベントが多い気がするのよね。

感動させるのには成功したのに、どうも「もったいない」のだ。
(上に上げた2つのイベントを特別指摘しているわけではございません、念のため)


■体験をどうデザインするか

体験をどうデザインするか、なんて言っちゃったものの、別に僕はイベントのプロでもなんでもないので何かこうすればいいというパッケージを持っているわけではまったくない。

ただ、参加者目線で考えれば、誰かが話すだけの講演はやっぱり今っぽくないよね。おもしろくない。感動で終わらせるのは単なる消費だ。次につながる発見をしたり、人に話したくなる体験があったりしないと、物足りないのだ。

そこには、やり取りの面白さがあって欲しい。楽しさの共有をしたい。誰かの思いに「インタラクティブなコミュニケーション」を通じて触れることで、この人がやるなら自分もやろう、という連鎖を味わいたい。

要は、「コミュニティ感」をいかに演出するか、という点につきるんだけど。

例えば、普通の講演と違ってワークショップ形式だと、みんな話さなければならないので圧倒的に「自分ごと」になりやすい。やり取りそのものが体験だし、言葉になってなかった自分の考えを人に話すことで自分の考えを形にし、発見できる。

「自分ごと」になるから語り部になるんだと思うし、それにはコミュニティの一員になる感覚が近道だと思うわけです。

ワールドカフェが組み込まれていると、やっぱり圧倒的に楽しい。参加者のレベルが揃わないと、発想を積み重ねていくだけのリテラシーが求められるワールドカフェは楽しくなかったりするが、そんな場合はケーススタディーで意見を戦わせるのも面白いかもしれない。
(こっちはこっちで別のリテラシーが必要だが、ファシリテーターさえしっかりしていればなんとかなる要素が強い気がする)

規模や目的次第ではワールドカフェのようなセッションは難しいかもしれないが、例えばtwitterのコメントを開場に映写して講演者がそれにコメントするだけでもインタラクティブさは演出できるだろう。

もっとシンプルに言ってしまえば、何らかメモをとらなくちゃいけないフローをデザインすれば、主体的な参加感がずいぶん増えるのではないだろうか。終わり際にやっつけでアンケートを書かせるのではなく、きっちり論評をさせることを念頭においてアンケートに誘導する。

こう書いていると、コミュニティ感の演出とは、主体性を生み出すための質の高いデザインの一つであるのかもしれないね。


■イベントの熱を持続させる

イベントが何らかのアクションを起こさせることをゴールとしているなら、イベントの終わり方&その後がとても重要である。さらっと終わってしまったらイベントの効果も半減だ。

鉄は熱いうちに打たなければならない。NPO目線で言えば、その場で寄付などのアクションをお願いしたり、次回参加してもらうための受け皿的な場をきっちりと案内してあることが重要になる。

ただユーザー目線も加えて僕が大事だと思うのは、そのあとにいかに熱を持続させてくれるか、だと思うんだよね。

先日の「シェア」のイベントでは翌日にアンケートを依頼されたのだが、主催者が(許可の上で)アンケートにあった各人の学びのコメントをfacebookのグループでシェアしてくれた。

クローズドの環境で連日アップされていくアンケート結果を見ながら、新たな視点を手に入れられたと思う。そして更に重要だなと思ったのは、毎日facebookを見るたびにそのイベントでの学びを思い出した、ということだ。

一週間も同じテーマでずっと考え続ける機会があると、自分なりにそのイベントの学びや意味合いを言葉にできるくらいには考えがまとまってくる。つまり、自分の言葉になってくる。

これは、僕にとっては財産だ。そして主催者からみると、「自分ごと」として話してくれる「語り部」を一人手に入れたことになる。

昨年僕が企画の中核にいたNPOブラストビートの1周年イベント。イベントそのものは分刻みで感情をイメージしながら企画したので、ゲストに楽しんで頂ける出来にはなったと僭越ながら思っているし、その場で会員を集めるという目的もある程度は達した。

でも、正直その後のコミュニティづくりまでは深く考えていなかった。二次会もぐだぐだだった。今思うともったいなかった。
(1ヶ月前に急遽企画することになったという事情の中でベストは尽くしたけど)

また、僕がスピーカーとした参加させて頂いた「25(ふっこー)被災地の今を知る会」。NPOではなく純粋に「被災地の今を知る」ために様々な人と人が出会う場所を提供することを目的としているイベントなのだから、絶対的にその後のコミュニティづくりが重要になる。

僕は1回目しか参加していないのでわからないが(わからないこと自体が問題を表しているような...)、毎回(僕以外は)すごいゲストを招いているにもかかわらず、今ひとつアクションに繋がるような学びやコミュニティを提供できていないのではないかと、チームには期待しているだけに少し心配もしているのだ。

イベントは、イベントの時間が終わったら終わり、ではないのだ。


■コミュニティづくりを「パッケージ化」できたNPOが勝ち?

何かを伝えよう、アクションを起こさせようとした時、必要なのは良質な「コンテンツ」と「コミュニティ」だ。

NPOも各種のイベントの経験を積んできて、コンテンツのレベルは年々上がっているのではないかと想像する。

でも、コンテンツは"acquirement"には役立つが、それだけで"engagement"を生み出すには弱い。

コンテンツは簡単にコピーできる時代だ。コンテンツで"acquirement"を生みつつ、コミュニティで"engagement"を生むことが必要なのではないだろうか。NPOが本当に求めているのは明らかに"engagement"だろう。

僕は、今後コミュニティ作りの方法に長じたNPOがたくさん出てくることを期待しているし、そうしたNPOが単に自分たちの組織だけでそれを実現するのではなく、できればパッケージ化して他のNPOにも指導してもらいたいものである。

考え方を出荷して、業界全体を進化させて欲しい。

例えば児童養護施設の支援をやってる団体がコミュニティづくりのパッケージ化に成功したら、児童養護施設のテーマ以外のことでも各所に呼ばれるようになるだろう。結果、その団体の活動と解決したい課題そのものもセットでシェアされていくはずだ。この効果はバカにならない。

NPOの中でも組織として完成度が高そうなフローレンスでもいいし、かものはしプロジェクトやリビングインピースでもいい。もちろん、NPOを支援する立場の二枚目の名刺がその高みまで到達してくれればそれほど嬉しいことはない。

まだまだ横の連携が弱いNPOの世界。リソースが限られる中でなかなか本業としての支援活動以外には手が回らないかもしれないが、ここは鶏と卵。やるしかないと思うんだ。

どこの団体がコミュニティづくりの圧倒的なリーダーになるのか、楽しみ。
僕も何ができるか、アンテナを高めていこう。