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2015年12月31日木曜日

作りたいのは「良い会社」か「良い事業」か 〜 2016年に向けて

「良い会社をつくりたいのか、良い事業をつくりたいのか」

これは僕が採用面談の時にかなりの頻度で話す話だ。

一瞬きょとんとされた後に、続いて僕が説明する。

photo credit: Bugis EB via photopin (license)

「良い会社を作りたい会社」とはこんな会社。

どういう領域の事業をやるといった「ミッション」は曖昧。
その代わり社員がどう振る舞うべきか、どうあって欲しいかという「バリュー」は強い。

新卒カルチャーであり、若いうちからどんどんとチャレンジさせる。
失敗も厭わない。

比較的自由にチャレンジした結果、生まれてきた事業を育てる。
(大きくならなさそうならさっさと閉じる)

若い頃からチャレンジさせる環境は、起業家精神にあふれた人をひきつけるし、そのように育っていく。
少なくない社員が起業を目的に会社を辞め、世間からは人材輩出企業として認知される。

例えるなら、サイバーエージェントやリクルートのような会社だ。
(正確な内情というよりは、あくまでもイメージとして。今は昔と違うとか、色々つっこみどころはあるだろうと思う。)

「21世紀を代表する会社を創る」と言っている通り、何をやりたいとはいっておらず、ただただ世間にインパクトを与える大きな会社にしたい、というニュアンスが強い。

「自ら機会を創り出し、機会によって自らを変えよ」も、人に向かっている言葉であり、「何をやるか」には向かっていない。

どちらも若いうちからチャレンジし、活躍できる会社であるというイメージが強い。



一方で、「よい事業を作りたい会社」の代表格が、クックパッドのような会社だ。

何よりも先に、「毎日の料理を楽しみにすることで、心からの笑顔を増やす」というミッションが立つ。

ミッションに共感した人しか入社させないし、ミッションから外れることは絶対にさせない。

中途カルチャーであり、プロフェッショナルが集まっている。

GoodではダメでBestなものしかリリースしない。

失敗してもいいからチャレンジすればいいじゃない、なんてものは許さなさそう。
(社長が佐野さんから穐田さんに変わって、だいぶ雰囲気も変わっていそうな気もするけれど)

クックパッドの社員は質の高さで有名だが、起業家を排出しているという印象はない。

両者を厳密に比較しようとすれば、企業規模やステージの違いとか、色々突っ込みどころがあるのは承知の上だが、イメージで伝わりやすいのでよく例に出している。

もちろん、サイバーエージェントやリクルートはよい事業を生み出しているし、クックパッドはよい会社であることで有名でもある。

言いたいのは、どちらが主でどちらが従かという話。
良い会社を作れば良い事業が結果として生まれると考えるのか、良い事業を作るために良い会社であらねばならないと考えるか。

実際にまわりに起業家がいる人なら、その視点で想像してもらう方がわかりやすいかもしれない。

やりたいことにとにかく固執して、どんな面倒や非効率も乗り越えようとする「ミッション」ドリブンの起業家。
そこに市場とチャンスがあるのなら、領域は関係なくとにかく事業を作ろうとする「バリュー」ドリブンの起業家。

ココナラはどういう会社であるかと説明するのに、まずこの話をすることが多いのだ。

photo credit: DSCF4558 via photopin (license)

さて、ココナラ。

良い会社を作りたいのか、良い事業を作りたいのか。

僕らと親交がある人なら、どちらかといえばココナラが後者のタイプであることは察しがつくだろう。

ミッションを実現することが主である。
ミッションを実現するために、良い会社にしなければいけない、という考え方。

ミッションに強く共感した、プロフェッショナルの集団でありたい。
好きにチャレンジをさせるわけではないけれど、目標さえ合意すれば、あとのHowの部分は個々人に大胆に任せる、そんな会社。

だからこそ、採用基準は「ミッションに共感していること」「自走できること」「自分より優秀な人であること」。

自分より優秀であるというのは、お任せする領域で意見が割れたら「あなたが言うならあなたの言うとおりにしよう」と心から思える相手であるという意味。
上司と部下の関係性にならない、と言い換えてもいい。

正直、この3つをまったく満たさない人を採用したことはないにしても、心にひっかかりながら採用したことはある。
結果、あまり良いことにはならないというのが3年以上経営してきての正直な思いだ。

もちろん、僕が十分に活かしてあげられなかったというマネジメントの問題も大きいので、採用段階での判断で全てを語るつもりはない。
ただ、よりよいチームを作る上でも、絶対に妥協はしたくないという思いを強めている。


また、2015年の僕の中での大きな変化は、「良い事業をつくるために、良い会社であらねばらない」の後者の部分に対する認識が大きく変わったことがある。

正直、以前は前者しか頭になかった。
雑に表現すれば、ビジョンに共感してベンチャーに飛び込んできたんだから、事業を伸ばすこと以外にゴタゴタ言うな、という感覚と言ってよいかもしれない。

事業が立ち上がるかどうかわからない初期の頃は、当然に組織のことなんか考えている余裕が少ないのは仕方ないのだが、振り返ってみると、もう少し早く組織のことを考えてもよかったかなと思うことが多い。

もちろん、事業が伸びてないのに組織のことを考えても意味がなく、事業が第一であることは変わらないのだが、2015年は、会社をやるからには社員の人生を背負っているんだなぁと、改めてその責任に思いを馳せることが多かった。

良い会社、良い組織であれば、みなも力を発揮しやすくなるし、優秀な人も採用しやすくなるという当たり前のことにも気づいた。
頭ではわかっていたことだが、心の部分で気づいたといってもいいかもしれない。



2015年は、僕らが描いた未来像が投資家に受け入れられ、多額の支援をいただくことができた。
そして、その未来像に共感したとても優秀な方々の入社が、どんどんと決まっている。

2016年は、その未来像に近づけるかどうか、経営者としての戦略やエグゼキューション力が問われている。

描いている未来が実現出来うるものであることには自信があるが、経営者としてそれを現実のものとすることができるかを考えると、楽しみよりもプレッシャーしかない。

また、組織が拡大していくなかで、みなが力を発揮できる組織であれるかという手腕も同じように問われている。


お金も人も手に入れたなら、もう言い訳はできない。

最高の会社を作り、最高の事業を創る。
同時に。


5年後、10年後に2016年を振り返り、あとにも先にもあの時の緊張と興奮は二度とないかもしれないと思えるくらいの、1年にしたい。 


2015年、応援・ご支援いただいた皆さま、ありがとうございました。
2016年もよろしくお願いします!


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