ページ

2012年2月16日木曜日

紹介:「日経平均を捨てて、この日本株を買いなさい。」藤野英人(ダイヤモンド社)

カリスマファンドマネジャーと言われる藤野英人さん(twitter: @fu4)の新著、日経平均を捨てて、この日本株を買いなさい。 が先日発売された。藤野さんは高校の大先輩であり、個人的にもお世話になっていることを予め断った上で、ぜひとも推薦させていただきたいと思う。

この刺激的なタイトルの本の内容をあえて一言でまとめるなら、「大企業神話にさえ縛られなければ、日本には成長企業が溢れている」ということになるだろうか。

9.11のあった2001年9月末から2011年9月末の10年間で、東証株価指数(TOPIX)はー26%下落した。「日本経済はもう終わりだ」という声が巷に溢れ続けたこの10年、この下落幅は皆さんのイメージに近いだろう。

しかしながら、同じく2001年9月末に上場していた2,618社のうちこの10年間で株価が上がった企業は1,493社と、なんと57%の企業の株価は上昇していたのだ。

なんともイメージとは合わないかもしれないが、このカラクリは、
1)TOPIXは時価総額の加重平均であるため時価総額が大きな大型株の動向に影響を受けること、
そして
2)この10年で大型株は軒並み株価を下げた一方で、株価を上げたのはほとんどが中小型株であったこと。

つまり、足を引っ張り続ける大企業の影に隠れて、日本にはたくさんの成長企業があるんだよ、ということなのだ。

著者の藤野さんは、90年代後半の金融危機、アジア通貨危機、2000年以降のITバブル崩壊、米国同時多発テロ、リーマンショックという様々な経済危機をことごとく「優良株を安く買うチャンス」として乗り切ってきた。乗り切るどころか、勝ち続けてきた。

先ほどの例で言えば、この10年間で株価が上がった企業が1,400社以上あるのだから、良い運用成績を上げるのは「神業でもなんでもない」と藤野さんは言う。それどころか、「道端にたくさんお金が落ちていて、しかも、誰も拾わずにそのままになっている状況だ」と。。。

とは言え、藤野さんがリーマンショックが起きた直後の2008年10月から運用を開始した「ひふみ投信」では、TOPIXが当時より30%下落している一方で、なんと25%の上昇と驚異的な成果をあげており、これを「神業」と言わずしてなんというのか。

「道端のお金の見つけ方」なんてものがあるのなら教えて欲しいじゃないか!!!

・・・そんな藤野さんの投資ノウハウ、すなわち「これからの時代に伸びる企業を見極めるノウハウ」が詰まったのが、本書、日経平均を捨てて、この日本株を買いなさい。だ。


本書の構成をざっくり見ると、

  • なぜインデックス投資が危険か
  • どうやって超成長銘柄を見つけるか
  • 今後の経済はどうなるか
  • オススメの投信

となっている。

終章でオススメの投信を列挙しているのだが、ライバルの投信でも良いものは良いとわざわざ敵に塩を送ってしまうのがいかにも藤野さんらしい。

本書の内容についてあまり詳細に紹介するとネタバレになってしまうので、それは買ってからのお楽しみとして頂きたいと思うのだが、藤野さんの投資哲学としてぜひ紹介したいのが、「応援するつもりで投資する」という言葉。

本書では成長銘柄の見極め方が色々と指南されているが、その背景にこういった考え方があるからこそできる投資法なんだろうと感銘を受けた。

感銘といえば、2011年3月の東日本大震災の直後、ファンドマネジャーとしてどう立ち向かうか苦悩したというくだりが本書に登場する。

それを読んで、震災後の週明けの藤野さんのtweetを思い出した。当時、強い印象を受けた。


単にどうやったら儲かるかを超えた株式投資の本質を、ぜひ本書で発見して欲しいと思う。
「成長銘柄の見極め方」が指南されているんだもの、投資に興味がある方に限らず、就職・転職を考えている方や、これから起業される方も、必ず何かしらの発見があるはず。

最後に、震災について触れている章で、こんな記載があった。
「私はベンチャーキャピタリストとして、ベンチャー企業の動きにも普段から接したり目にしたり耳にしたりしていますが、やはり、今回の震災後も新しいビジネスや会社を立ち上げようという動きが明らかに活発化してきています。こうした中から、今後の日本を変えるような企業が必ず出て来ると思います。」
まだまだ第一歩を踏み出せてもいないけれど、僕らもそんな企業の一角を担えるように頑張るYO!



【参考】 藤野英人(ふじの・ひでと)レオス・キャピタルワークス取締役・最高投資責任者(CIO)。1966年富山県生まれ。90年早稲田卒業後、国内外の運用会社で活躍、特に中小型株および成長株の運用経験が長く、22年で延べ5000社、5500人以上の社長に取材し、抜群の成績をあげる。中でも99年には500億円⇒2800億円にまで殖やす抜群の運用成績を残し、伝説のカリスマファンドマネジャーと謳われる。その後、2003年に独立、現会社を創業。現在は、販売会社を通さずに投資信託(ファンド)を購入するスタイルである、直販ファンドの「ひふみ投信」を運用。ファンドマネジャーとして高パフォーマンスをあげ続けている。

出典:ダイヤモンド社書籍オンライン